タイ地域医療保健研修
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エボラウイルスの長期の持続感染がヒト―ヒト感染を起こす可能性

2014年~2015年の南アフリカにおけるエボラウイルスのアウトブレイクは前例のない規模で、結果として28000例以上の症例が報告され、11000人以上の死者を出した。2014年3月にリベリアで最初の症例が報告されてから、急速に感染は広がり4800人以上の死亡者を出した。国際機関等のサポートの元、リベリア政府は地域の感染収束を目指し対策を行った。2015年3月、感染の生存者との性交渉を行った女性がエボラウイルスを発症し、性感染として最初の報告となった。リベリアは感染対策を進め、2015年の9月3日にはエボラウイルス感染症の収束を宣言した。ところがリベリア国内で2015年11月にエボラウイルス症例が報告された。15歳の男性Aがエボラウイルス感染を発症した。Aの父親Bはエボラウイルスに対するIgG, IgM陽性でAの前に感染したと考えられた。Aの弟E(2カ月)はIgG陽性で、母体からの移行抗体と考えられた。母親Dは1年前(2014年7月)にエボラ感染者の看病時におそらく罹患しており、低いIgMおよび高いIgGを示していた。この家族は2014年以降、国外の旅行や感染を疑う人との接触はなく、系統樹、疫学的に感染経路としては、母親D→父親B→Aへの感染が疑われた。Aの感染は重症であり、死亡した。エボラウイルスは場合によっては1年以上持続感染し、ヒトーヒト感染を通じて再度アウトブレイクを起こす可能性がある。
写真出典:Wikimedia Commons

Persistence of Ebola virus after the end of widespread transmission in Liberia: an outbreak report Lancet Infect Dis 2018 Jul 23

#粘り強く検討した印象的な論文です。新規の感染経路の同定はこれほど詳細に検討する必要があるのかと驚きました。またエボラウイルスが長期に持続感染を起こし、そこから性感染症等により新規に感染者が出る可能性があるとのこと。これまでのエボラウイルスの印象が変わります。僕のサマリーではわかりにくいと思います。論文は抗体価、遺伝的調査も詳細にしています。フリーでダウンロード可能ですので、ぜひ一度原文を読まれてください。

髄膜炎菌血清型の流行の変遷、
ハッジ、ウムラ

髄膜炎菌感染症は世界全体では毎年約30万人の患者が発生し、3万人の死亡例が出ている髄膜炎症例はmeningitis beltとよばれるアフリカ中央部において発生が多い。いくつか血清型があり、日本では髄膜炎菌感染症の起因菌はBおよびY群が同定されることが多い。アフリカではA群が多い。B群はヨーロッパに多く、C群は米国、ヨーロッパに見られる。2000年~2001年のメッカへの巡礼者間でのW-135群の感染例が発生した。ワクチンはA、C単独もしくはその2群、およびA、C、Y、W-135の4群混合ワクチンが使用されている。B群に対するワクチンは免疫の惹起が弱いとして導入が遅れていたが、現在は外膜タンパク質ワクチンMenB-FHbp および MenB-4Cが米国で使用可能であるが、引き続き効果の検証が必要である。ハッジおよびウムラ(メッカ巡礼)は多数の人が集まるため、髄膜炎感染のリスクとして有名である。(A,C,Y,W血清型)髄膜炎ワクチン接種の施行により髄膜炎菌感染症が抑制されている。ハッジ、ウムラは世界中各国からメッカに訪問するため、様々な髄膜炎菌の血清型および遺伝型が持ち込まれる。加えて現在は必須のワクチン接種に含まれていない株の流行(B,X)を認めるようになった。現在はワクチンの結果、多くの国で血清型Bの流行が報告されている。またアフリカのmeningitis beltにて血清型Xの流行が報告されている。今後世界各国、特にイスラム教徒圏での髄膜炎菌の流行をフォローすることで、ハッジ、ウムラによる髄膜炎菌の流行抑制が可能となる。

Travel Med Infect Dis. 2018 Jul - Aug;24:51-58.

#ワクチン導入後の血清型の変化は他のワクチンでも示されていますが、髄膜炎菌においては世界各国で血清型Bが増加しています。血清型Bに対するワクチンは未だ効果についても議論されており、世界各国の血清型の変遷と併せてワクチン開発もフォローしていきたいと思います。

GMS会員】eラーニング
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※GMSeラーニングは、会員限定のコンテンツです。

1)マラリア鑑別のポイント
2)消化管寄生虫症 鑑別
3)マヒドン大学熱帯医学部コース説明 等

サンプル映像は、2017年マヒドン大学熱帯医学短期研修
「消化管寄生虫症概論」Prof.Yaowalarkです。

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